尾崎喜八

上機嫌メッセージ

『春愁』尾崎喜八 その(2)

この賢さ、この澄み晴れた成熟のついに間に合わなかったことが悔やまれる。ふたたび春のはじまる時、もう梅の田舎の夕日の色や暫しを照らす谷間の宵の明星に遠くきた人生とおのが青春を惜しむということ、これをしもまた一つの春愁というべきであろうか。(尾...
上機嫌メッセージ

『春愁』尾崎喜八 その(1)

静かに賢く老いるということは満ちてくつろいだ願わしい境地だ、今日しも春がはじまったという木々の芽立ちと若草の岡のなぞえに赤々と光りたゆたう夕日のように。だが自分にもあった青春の燃える愛や衝動や仕事への奮闘、(尾崎喜八 詩人・随筆家・翻訳家)...